TQM活動
医療安全教育
目的
- 医学部,薬学部ではCBT (Computer-based testing) やOSCE (Objective Struc-tured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)といった臨床技能を養成するための大学教育が行われ,固有技術の養成に関する標準化は行われつつある.
- 医療従事者は国家資格を有する職員が多いが,管理技術に関する教育は現状大学教育でも体系的に行われておらず,また大学教育を受けていない職員はそれらの教育は皆無であり,臨床現場で教育せざるを得ないのが現状である.
- QMS (Quality Management System;質マネジメントシステム) を構築する上で,医療の質・安全教育をどのように体系的に実施していけばよいかを,これまでのTQM (Total Quality Management) 推進活動をもとに問題点を整理した上で計画・実施・検証したので報告する.
現状把握
1.日常業務の可視化
1.1 病院機能を表わす品質保証体系図の作成
品質保証体系図:医療の質を保証するため,各部門が各段階で実施する様々な活動の相互関係を表した図 (図1).
1.2 プロセスフローチャート (PFC) の作成
PFC:製造業ではQC工程表として工程の流れを記述することで,プロセス (ある目的・機能を達成するための一連の業務・手順) の管理,改善を行ってきた.この手法を用いて,業務の流れを可視化することで,誰が (実施者,責任・権限) ,いつ (どのようなとき) ,何を (インプット,資源) ,どのようにして (活動) ,どのような成果を得るのか (アウトプット/アウトカム) ,そのためにどのように管理 (測定,管理) するのかの連鎖を明らかにすることで,質と安全を確保することが目的.
2008年からの取り組み:診療プロセス管理を中心にPFCを用いて可視化作業を実施.71種類のPFCが作成.

問題点:
①PFCによる意義が理解されていない (図2) .
②PFCの完成度が低い.
③PFCが現場まで周知・徹底されていない.
2. インシデント報告システムの導入
2007年より電子カルテと連動したインシデント報告システムを導入.分類等は,(財)日本病院機能評価機構のヒヤリハット事業をベースにコード化し運用.職員ID,患者IDは電子カルテとリンク (図3) .これにより,報告体制の迅速化,データ集計・分析の効率化がなされた.

報告書の記載内容の観点:
- 事故の結果だけなく,事故発生前後のことも段階を追って記載している (具体的な観点:指示受け,準備,実施,事故後の内容が記載されている) .
- プロセス指向の書き方になっている (具体的な観点:人ではなく,業務のやり方に着目して事故原因を記載することができる.情報・モノ・作業に着目した書き方になっている).
- 「確認丌足」,「思い込み」,「見間違い」といった人の問題を書いている場合は,その理由もきちんと記載している
- 「きちんと確認する」といった人に対する対策ではなく,業務の改善につながるような対策を立案している.

問題点:
④報告件数が少ない (図4) .
⑤報告分類に偏りがある (図5).
⑥「事故内容詳細」・「原因の考察と対策について」が今後の対策立案に結びつく報告書に なっていない.

教育計画
1.対象
必頇:役職者ならびに2008年4月以降の入職者 (n =110)
任意:それ以外の職員全員 (n =100)
2. 実施時間
業務時間内に1時間程度
同じ講義を4回実施
3. 教育内容
3.1 教育項目の導出 (図6)

結果

教育実施運用上の困難だった点
- 他職種混合の教育だったため,事例選定やグループ編成が難しかった.
- 参加時間帯の変更も認めたため,グループの再検討を何度も行った.

検証

考察
- これまでの医療の質・安全に関する問題点をもとに教育計画を立案し,実施したことにより,インシデント報告に差は見られないものの,参加者のインシデント報告に対する意識は変容しつつあることが推察された.
- 6回全参加者とそれ以外では,教育内容の意義についての理解の差が見られたことから,今回の教育内容を1シリーズとし,必頇参加カリキュラムとして継続的に実施する必要があると考える.
- 今回の教育実施後,院内事故防止委員会を主管部門とし,各部門でKYTを実施し,当番で報告することとした (図13).
- 以上より,医療の質・安全教育を体系的にかつ継続的に実施することで,QMSを構築することが可能になると考える.
- 今後は,医療の質・安全教育について,キャリアラダーのような段階的な教育が必要であると考える.









